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冨岡由理弥

ソプラノシンガー

いつも心に歌声を

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コラム

姿勢 ~後編~

私がなぜそんな事を気にするかについては、(ここはあえて「気にする」と表現しよう) 長年、裏方としてスタッフ側にいたからだと思う。
スタッフと言っても、演奏会を仕切るステマネとは違う。
会社を背負って、大手のお客様(主に大手ホテル)を相手に契約通りにイベントを遂行することだ。
皮肉にも、演奏者側には決して聞こえてこない声が、事務所側にはよく聞こえる。クレームや苦言も沢山受けた。

ある実力派の演奏家を現場に連れて行った時のこと。
彼女はお世辞にもお洒落とは言えないファッションで出勤してきた。
演奏の腕は確かなのだが。
クライアントが現れ、彼女の姿を遠目で見つけた途端、小声で「おいおい、大丈夫かよ・・・」
と口から漏れた。

別のとある現場では、私が現地に到着するより前に先に演奏家の人が到着した。
するとクライアントから電話がかかってきた。
「今○○さん到着したんですけど。なんか子供みたいだけど・・・大丈夫?
ちゃんと仕事してくれますよね・・・?」とかなり心配していた。

人を見た目で判断するなんて!と憤りを感じてもおかしくない事柄ではあるが、悲しいけれど、これが現実なのであった。
良い演奏をすれば良いのではないか?
実際にステージに立つ時には衣装を着てるんだし、そこできちんとした演奏が出来れば問題無いのではないか?
そう思いたくもなる。

しかしそれは所詮「演奏家の目線」に過ぎない。

クライアントにとって演奏家は「お客様に提供するエンターテイメントとして相応しいかどうか」だけが重要なのである。
お客様の心配はクライアントに伝わり、クライアントの心配はホテル側に伝わり、ホテル側の心配は我々音楽事務所に伝わる。

責任がかかっている人間(会社)が間にいくつもあるのだ。

例え小さな心配の種も、伝言ゲームをしているうちにどんどん大きくなるものである。

演奏以外はどうであれ、演奏さえ良ければ全員が満足・・・
と思って良いのは“超”一流の演奏家だけに許された特権ではないだろうか。

少なくとも本番当日だけでもちゃんとしていれば良いという教訓ではあるが、そう都合良くはいかないらしい。

何故なら、仕事以外で取引先や音楽事務所の人にバッタリ会った経験が何度あったかを思い出すと・・・・痛感せざるをえない。

人目を避けるようにして町を歩く事が出来たら、いくらか気が楽かも知れないが。

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